この記事は大体これ位の時間で読めるかも?: 257

その日は仕事から帰り、いつもの様に1階でビールを飲みながらテレビを観ていた。

帰ると必ず彼女が玄関まで迎えに来てくれるのだが、何故かその日は来なかった。

 

2階でテレビでも観てるのかな?それとも寝てるのかな?

まあ、もう少ししたら様子を見に行こうかな。と思っていた。

 

しかし、2缶目のビールに手を付けようとした時に『その時』が来てしまった。

ゆっくりと2階から降りてきた彼女の、泣きはらした顔が僕の目の前にあった。

 

 

『別れようか・・・』

 

 

僕は頭の中が真っ白になり、しばらく何も言えなかったが

今まで余り自己主張をして来なかった彼女が、その言葉を口にするというのは

余程の強い決意だという事だ。

 

 

『・・・分かった』

 

 

僕は言った。

彼女は2階に駆け上がり、畳の上で体をくの字にして泣いていた。

大きな深呼吸を何度もしながら。

まるであの時の様に。

 

僕はその姿を見ても、唖然として不思議と涙が出なかった。

あまりに突然の事であり、まだ信じられなかったからだ。

 

しばらくすると、涙を拭い彼女はニコっと笑いながら

 

『飲みに行こっか?』と言った。

 

それが彼女と飲んだ最後の日となった。

結婚11年目の夏の事。

 

 

彼女との出会いは、インターネットを通じてだった。

当時日本での普及率は10%〜20%前後で、僕も彼女も仕事でしか使っていなかった。

 

それは今で言う『出会い系』のはしりだったと思う。

異性とメールが出来る掲示板は、その当時にしてはかなり新鮮だった。

 

20代も後半になり、親から結婚はまだかと急かされる様になった。

友人も次から次へと結婚していった。

 

それなりに普通の恋愛を経験し好きな様に生きていたが、

当時付き合っていた彼女との別れをきっかけに

こういう出会いもアリなのかなと思った。

 

僕は犬が好きなんですよ~^^

私も大好きです!

僕は都会よりも田舎が好きなんです。

私も田舎の方が好きです^^

ラーメン大好き!

私も!

 

不思議と4歳年下の彼女とは話しが合った。

どちらかが社交辞令で、相手に合わせてるのかな?

と思う程全てにおいてだった。

 

・・・会ってみようか?

 

やり取りをはじめてから2ヶ月弱、僕たちは毎日電話で話す仲になっていた。

 

JR渋谷駅の改札出た所に11:00ね。

人が多いから分かるかな?

いや、携帯あるから大丈夫でしょ。

 

本当は正直不安だった。こういう出会い方は初めてだからだ。

会ってしばらくしたら、いきなり怖いお兄ちゃんとか出て来ないかな?笑

なんて考えながら僕は山手線に乗っていた。

 

そして僕と彼女、ナナとココの始まりは全てここからだったんだ。