この記事は大体これ位の時間で読めるかも?: 36

僕と彼女の間に子どもは出来なかった。

ナナとココだけが子どもだった。

勿論子どもは欲しかったし、彼女もそうだった。

 

しかしアトピーによるトラウマが僕の心を蝕んでいた。

それを補うように、ずっと仲は良かった。

どこに行くのにでも2人だった。

 

 

周りからは理想の夫婦と言われていたけど、実はそうじゃ無かった。

2人ともずっと苦しんでいたんだ。

 

もう子どもはいらないし、2人で仲良くやっていけばいいよね?

結婚11年目の結婚記念日に彼女は言った。

 

もし、東日本大震災の様な地震があってお互い別々の所で死んだら、

あの世での待ち合わせ場所を決めておこうよ?

 

じゃあ、あの世には虹の橋っていうのがあるらしいからさ!

ナナとココを連れて虹の橋で待ち合わせしようか?と僕は言った。

 

でも僕は知っていた。

彼女が生まれてきたからには女として、

子どもが欲しいとずっと言ってきた事を。

 

僕がどうしてもダメなので、夜中に声を押し殺し

こっそりベッドの隅で泣いている事を。

 

別れを実際に切り出したのは彼女からだけど、

実は切り出したのは僕からなんだ。

心の中で。

 

30代後半に入りチャンスはあまりない。

やはりこのままではいけない。

苦渋の決断だった。

 

別れを決断し一緒に飲みに行った日、

彼女は腫らした目で楽しそうに語っていた。

 

最初に会った時に居酒屋に居た、几帳面おじさん面白かったよね!

いぬたまの犬達も

かわいかったなぁ~。

 

楽しかった。初めて会った時の様だった。

そして僕は何度も思った。

 

別にこのまま一緒に居ればいいと。

でもそれじゃお互いダメなんだ。

 

 

2人とも分かっていた。

彼女は妻としてはパーフェクトだった。

掃除、洗濯はマメにやる。料理も美味い、気が利く。

優しくて思いやりもある。

 

離婚届を一緒に出しに行った帰りに

本当に今までありがとう。

一つも不満は無かったよと伝えた。

 

彼女も11年間本当に楽しかった。

最高の旦那さんでした。

今までありがとう。と言ってくれた。

 

そして約束した。

2人の運命の人は他に居る。

お互い必ず幸せになると。

 

彼女は最後

 

『あの約束は無しね。

ほら、虹の橋で待ち合わせするってやつ。

それじゃ、体だけは大事にね。ちゃんと食べるのよ』

 

そう言ってナナと一緒に出ていった。

 

僕は出て行った後、初めて涙が出てきた。

次から次へと出てくる。

 

そして恐らく生まれて初めてだろう。

声を出して泣いた。鼻水も止まらない。

どうしてだろう体に力が入らない。

 

何も考えられない。何も感じられない。

自分の体が、自分のものじゃないようだ。

 

両手をもぎとられる様な苦しみが

しばらく続いたんだ。